フェンウェイ・パークの空に舞い上がった38号──
その弾道がスタンドに吸い込まれる頃、
誰もが「今日の主役は決まった」と信じていた。
だがその直後、MLB全体を揺るがす“異常事態”が幕を開ける。
死球、乱闘未遂、怒号、報復、退場、そして制裁処分。
静かに始まった試合は、やがて憎しみの連鎖に飲み込まれていく。
そこに大谷翔平の姿はなかった。
──それでも、彼の“名前”だけが、あらゆる局面で蘇っていた。
「彼のように振る舞え」
「彼のように耐えろ」
「彼のように、沈黙で訴えろ」
だが、誰も“彼のようにはなれなかった”。
スアレスの再犯的な投球、マチャドの暴走、審判侮辱、そしてヌートバーの苦言。
それはすべて、“あの日の彼の沈黙”と重なる。
一度、パドレスに歩み寄った大谷の優しさが、またしても踏みにじられたという現実。
なぜMLBは彼を守れなかったのか。
なぜ誠実な言葉ほど、憎悪にかき消されるのか。
スポーツマンシップとは、一体どこへ向かっているのか。
この試合は、ただの報復劇ではない。
“フェアプレー”を叫んだ男が、いまだに沈黙の標的にされ続ける現実を、
──球界全体に突きつけた鏡だった。
これは暴力の記録ではなく、“失われた尊厳”の記録。
そしてその裏には、今もなお「Shohei Ohtani」の名が、静かに響き続けている。

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