ロサンゼルスの自宅には、
風の音すら吸い込んでしまうような“静けさ”があった。
それは幸せの静寂ではなく、
誰も言葉にしないまま積み重なっていく
“見えない揺れ”の気配だった。

家族グループに届いたひとつの冗談。
返されなかったひとつの返事。
そして、代わりに送られた短いメッセージ。
そのどれもが、
ただの会話として流れていくはずだった。
だが、偶然にしては出来すぎていた。

産まれたばかりの命と、
海の向こうで抱きしめられない両親。
帰りたくても帰れない娘。
支えたくても届かない兄。
そして、沈黙する夫。

誰も悪くない。
誰も何もしていない。
けれども、
何かが確実に“ずれて”いく音だけが、
静かに、確実に家族の中心を震わせていた。

慈善活動というはずだった小さな光が、
いつの間にか家族の影を照らし、
思わぬ形で輪郭を浮かび上がらせてしまった。
それでも、誰もその影を責めない。
ただ、次にどちらへ進むのか――
それだけが、今も答えのないまま置かれている。

これはスキャンダルではない。
対立でもない。
もっと静かで、もっと深い、
“家族の形が変わろうとする瞬間”の物語だ。

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